2012年09月14日

声帯ケナコルト注射

 ボイトレに通うのを半年ほどで止め、ふと声帯ケナコルト注射を試してみよう、と思いました。
 声帯ケナコルト注射については一色先生のところに最初に診察に行った時から選択肢に入れていたのですが、ボイトレがかなり良さそうであったことから、一旦外して考えていました。
 ケナコルトというのは貯留性ステロイドのことで、肥厚性瘢痕や傷跡の赤み治療などに使われています。ケロイド状に盛り上がり固くなった組織を、柔らかく小さくしたりするのに使うのです。
 声帯ケナコルト注射は、このケナコルトを声帯に直接打ち、声帯を萎縮させることを狙うものです。声帯が小さく薄くなれば、声は高くなるからです。
 ただ、輪状甲状軟骨接近術(甲状軟骨形成4型)と異なり、実際に声を出しながら調整して打つ、ということができません。ケナコルトは二三ヶ月かけて効いてくるものです。そのため、打ちすぎてしまうと取り返しのつかないことになります。つまり、声帯が萎縮しすぎて、声がかすれる、出にくくなる、ということです。
 ですから、一回に打つケナコルトは少なめの量で、様子を見て二回三回と繰り返していくことになります。効き方には個人差もかなりあるので、安全に使うにはちょっとずつやっていくしかありません。

 この声帯ケナコルト注射の存在は以前から知っていたのですが、知人やネット周りで聞いてみると、あまり良くない評判が多かったです。
 「効果がない」「声がかすれた」というようなものです。
 「効果がない」というのは分かります。前述のように、ケナコルトは少なめに打つものですし、一回打っただけでは実際上の変化がほとんど見られない、ということはあるでしょう。ただ、これは治療の性質上、ある程度仕方がないことかと思います。また、お金の問題を除けば、悪くなるよりは「プラスマイナスゼロ」の方がマシでしょう。
 「効果がない」のもう一つの意味は、最大限に声帯ケナコルト注射を活用しても、大して声は高くならない、ということです。わたしがお世話になった医師によれば、「せいぜい20Hz」とのことです。男性と女声の平均的な話し声は100Hz以上違いますから、声帯ケナコルト注射だけで男声を女声にするのは無理があります。
 ただ、わたしにとっては「20Hzも変われば御の字」でした。わたしの場合、周波数的には通常話声で236Hzと、一定のレベルに到達していたからです。後はいかにこれを楽にキープするか、ということが課題だったのです。
 また、当然ながら、声帯ケナコルト注射はMtFTSだけを対象にしたものではありません。一般の女声に見られる男性化音声などの治療に用いられるものです。この場合、声帯ケナコルト注射レベルの高さ変化でも、十分な意味があるでしょう。

 気になるのは「声がかすれる」という例です。
 これはケナコルトの打ち過ぎで、声帯が萎縮しすぎてよく閉じなくなった、ということです。
 こうなってしまうとかなり大問題で、元に戻す方法があるのかもよく分かりません。
 ですが、医師に相談したところ、「十何回、何十回と打たないかぎり、そんなことは起こらない」とのことでした。要は絶対量が問題なので、様子を見ながらちょっとずつ打っていく限りは、かすれるほど酷いことにはならないだろう、とのことです。

 それから、一般に声帯ケナコルト注射は局部麻酔の日帰り治療で行われますが、嚥下反射の強い人の場合、全身麻酔下で行わなければならないケースがあるそうです。
 こうなるとちょっと大掛かりで、極端な場合には気管切開などの可能性もあります。
 実際、(現在は消してしまわれたようですが)ネット上でこうした方法を受けた方が体験談を書かれていました。

 というわけで、声帯ケナコルト注射を視野に入れ、その前提で上に書いた医師の元を訪れ、こういう説明を受けました。
 ここでも一色クリニックと同様の検査を受け、やはり周波数的には合格点、という結果が出ました。
 「声がかすれ気味で力がない」のは、ある程度仕方がない、とのこと。基本的には「あなたが以前やったように、練習でさらにレベルを高めるのが一番良い」というアドバイスでした。

 わたしとしては、この時点で「声帯ケナコルト注射をやってみよう」という意志が固まっていたのですが、医師は別のオプションとして、「レーザーによる声帯部分焼灼」のことを教えてくれました。
posted by female-voice at 07:18| 女声の記録

2012年09月13日

エッジボイスから裏声を出すボイトレの効果と女声

 前回書きましたように、女声を専門としない普通の先生(GID指導経験はある)のところで、いわゆるミックスボイスを使えるようにする練習をしました。
 やっていると段々上達し、「中間の声」というのもなんとなく分かるようになりました。「なるべく小さな声を出す」意味も理解できます。
 ただ、それが日常使う声に反映されたかというと、そうでもありません。
 リップロールなどの力を抜く練習、エッジボイスから小さな裏声を出す練習などをしていると、声の状態は確かに良くなります。なんというか、声が引っかからずにスッと出るようになります。これはこれで、成果と言えます。
 また、当然ながら、歌を歌われる方にとっては、非常に有益な練習でしょう。
 しかし、わたしの目的は歌ではありません。この声を日常会話の声に活かす練習もあるのですが、どうも当初考えていた程有益ではないのではないか、と思えてきました。

 お断りしておきますが、そもそもこの練習は、主としてGIDや女声を必要とする人のためのものではありません。わたしたちにとって合理的でなかったとしても、当たり前の話です。
 また、女声練習のために役立つ要素もあります。
 おそらく、女声が全然できていない、まったくの男声のまま、という人にとっては、この段階がかなり有用なのではないかと思います。そういう人は、半ファルセットやミックスを使って「それっぽい」声を出す技術がまだ全然出来ていないからです。
 しかしわたしの場合、既に自己流で一定のレベルに達していたせいか、この段階の練習をいくらやっても、目覚しい成果は得られませんでした。

 ちなみに、この同じくらいの時期に、ナチュラルに女声を獲得した歌もうまいMtFの知人から、「喉を開く」ということを教わりました。女声というより、単に歌の練習のためのメソッドなのですが、こちらの方がむしろ有効な気がしました。
 彼女に教えられて、わたしはビューティーボイストレーナーという怪しげなグッズを使っていたのですが、別にこれでなくても、口に加えられる筒状のものであれば何でも良いと思います。ただ、このグッズは、声が外にほとんど漏れず、部屋の中で絶叫しても近所迷惑にならない、というメリットがあります。
 大きな声を出すこと自体が狙いではなく、喉を開ける練習をすることで、結果的に高い音でも息漏れしにくい、つまりひっくり返った裏声になりにくくする効果があるようです。
 いずれにせよ、喉の外側の余計な力を抜く、というのが大切です。

 何度も書きますが、この時点でのわたしの問題は、声の絶対的高さというより、良い状態をキープする力、低い方に「底が抜けない」ようにすること、綺麗な女声で息漏れせずに通る声を出すこと、声を出す際の「引っ掛かり」のようなものを取ることでした。
 このうち、「息漏れを防ぐ」という点では、このボイトレも一定の効果があったと思います。現在でも暇があると練習しています。
 しかし、総合的に見ると、かけている労力・費用に見合うほどの成果は、わたしについては得られませんでした。
posted by female-voice at 09:12| 女声の記録

2012年09月12日

ボイトレ、エッジボイス、ミックスボイス

 一色クリニックを受診し、声の周波数的には問題がないこと、そしてボイトレを受けてみたら面白かったことを書きました。
 ボイトレを続けてみよう、と思ったのですが、京都まで通う訳にもいかず、不躾ながら一色クリニックで指導されている(正確には一色クリニックそのものではなく、同じ場所でボイトレも行なっている)先生に、東京近郊で先生を紹介して頂きました。
 この方は一般の歌を歌われる方やアナウンサー・声優を目指す方などの指導を行なっている先生ですが、GID当事者の指導経験もあるとのこと。ともあれ受けてみよう、ということでボイトレを開始しました。

 最初は、リップロール(唇でプルプルという音を出す)で力を抜くこと。ここで口の両脇を軽く指で抑えると、脱力の意味が理解しやすい。そしてエッジボイス。
 このエッジボイスというのは、歌などに興味のないわたしは初めて知ったのですが、映画「呪怨」に出てくるような、喉の奥の方から出す「あ゛あ゛あ゛」みたいな音です。ネットで調べるとエッジボイスにもいくつか種類があるようですが、わたしがやったのは割と低い音で脱力した状態で喉から声を出すものです。ミックスボイス獲得の過程で練習されるようです。
 この状態は声帯が閉じているもので、つまり声帯を閉じる練習、ということです。なぜ声帯を閉じる練習をするかと言えば、裏声に近い領域で声帯を閉じてしっかりした声を出すためです。普通の声は声帯を閉じて出しますが、裏声は声帯が開いた声です。声帯が開いたままだとただの裏声なので、ここで声帯を閉じて声を出せるようにすることで、普通の声と裏声をスムーズにつなげる、ということです。「強い裏声」を出す練習とでも言えばいいのでしょうか。
 普通の人は、声を段々高くしていくと、あるところでケロッと声が裏返って、裏声になります。その間にははっきりと「裏返る」場所がありますし、裏声はまるっきり裏声なので、会話には使えない声です。「強い裏声」という中間状態を作ることで、この間を滑らかにつなげよう、ということです。

 わたしは最初、エッジボイスというもの自体知りませんでしたし、出せと言われてもうまく出せませんでした。
 練習しているうちにエッジボイスは出るようになったので、ここからエッジボイスの感じをなるべく保ったまま、裏声を出す練習をします。
 裏声になれば当然エッジは切れるのですが、エッジボイスの時にある声帯がくっつく感じをなるべくキープしたまま、裏声につなげるのです。
 この時、なるべく小さな声でやります。蚊の鳴くような、限界に小さい声です。小さい声でやると、声がかすれて息漏れになりやすく、声帯がくっついていないとすぐに分かるのです。大きい声でやると、息の勢いでごまかせてしまいます。「とにかく小さい声で」というのが、この先生のやり方でした。これについては、今でも有効だと思っています(大きい声を出す意味もありますが、それはまた別です)。
 小さな声でエッジボイスから裏声につなげる時、声帯を閉じている喉の奥の方の筋肉を感じるように、と言われました。これがなかなか難しいです。普通、もうちょっと外側の強い筋肉を使って喉を締め上げるようにして高い声を出そうとします。この強い筋肉の力は極力抜いて、声帯をくっつける細い筋肉にだけ集中する、ということのようです。
 やっていると、この声自体は少しずつ進歩していったのですが、奥の筋肉の意識というのは、なかなか分かりません。
 それでもこの調子で、半年くらいボイトレを続けました。

 なお、わたしは歌も歌えない素人ですので、上の説明が正確かどうかは分かりません。ボイトレの先生に言われたことを、自分なりに咀嚼したつもりですが、間違っているところがあれば申し訳ございません。
posted by female-voice at 07:57| 女声の記録

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